アニマルウェルフェア完全ガイド|歴史・国際基準・平飼い卵の世界動向

アニマルウェルフェア完全ガイド|歴史・国際基準・平飼い卵の世界動向

 

 

 

 

 

動物を「命ある存在」として扱うアニマルウェルフェア(AW)は、EUのケージ飼い禁止や米国・豪州の法改正を機に 世界的メガトレンドになりました。
本記事では平飼い養鶏歴5年の素ヱコ農園・松本が、AW の誕生から各国の法規制・企業のケージフリー宣言まで 一次資料15本超をもとに解説します。

1. アニマルウェルフェアの歴史

平飼い鶏が伸び伸びと過ごす様子

1964年、英作家ルース・ハリソンが『Animal Machines』で工業型畜産を告発したことが議論の出発点です。 翌65年には英国政府がブランベル委員会報告を発表し、家畜が満たすべき基礎的ニーズを提示しました。:contentReference[oaicite:1]{index=1}

1998年に欧州連合が採卵鶏の福祉指令 (1999/74/EC) を採択し、2012年からバタリーケージを全面禁止。:contentReference[oaicite:2]{index=2} さらに2027年までに全家畜ケージを廃止する「End the Cage Age」法案が2023年に閣議決定されました。:contentReference[oaicite:3]{index=3}

2. 「5つの自由」と国際ガイドライン

再資源化した飼料を与える様子

現在もっとも引用される指標が「5つの自由 (Five Freedoms)」です。 ブランベル報告を基に73年に英国農業省が整理し、世界動物保健機関(WOAH/OIE)が 陸生動物衛生規約7章に採用しています。:contentReference[oaicite:4]{index=4}

自由 内容
飢え・渇きからの自由 十分な餌と水を得る
不快からの自由 適切な環境(温度・休息場所)
痛み・傷害・疾病からの自由 予防・迅速な診療
恐怖・抑圧からの自由 精神的苦痛の回避
自然な行動をとる自由 十分な空間・社会的環境

3. 世界の普及率&法規制

EU

EUでは採卵鶏の平飼い・放牧率 63%に達し、 オランダは動物福祉ラベル「Beter Leven」付卵が小売シェア 95%を占めます。:contentReference[oaicite:5]{index=5}

北米

米国は9州がケージフリー義務化を可決(CA, MA, MI, CO…)し、 2025年時点の平飼い率は約42%。:contentReference[oaicite:6]{index=6} カナダも2036年までに従来ケージを廃止する方針です。

オセアニア

豪州は2036年までにバタリーケージ段階的廃止を決定(2023)。:contentReference[oaicite:8]{index=8} NZは2027年全面禁止を法制化済み。

アジア

日本の平飼い率は8.3%にとどまりますが、 大手外食や小売のケージフリー宣言が30社超に拡大。:contentReference[oaicite:10]{index=10} 韓国は動物保護法改正で飼育密度基準を強化しました。

4. 企業と認証ラベルの最新事例

  • マクドナルド:北米 2025 年までに100%ケージフリー目標、2024年進捗 74%。:contentReference[oaicite:12]{index=12}
  • ALDI Süd(独):2019年時点で殻付卵の 100% を平飼い以上に転換。:contentReference[oaicite:13]{index=13}
  • BBFAW 2023:世界上場企業の AW スコアを格付け、ユニリーバが最高 Tier1 を維持。:contentReference[oaicite:14]{index=14}

第三者認証

EUの「Beter Leven」(蘭)・「RSPCA Assured」(英)、 米国「Certified Humane」「Animal Welfare Approved」など 消費者が選びやすい星付・ラベル方式が普及しています。

5. 日本の現状と課題

止まり木に集まる平飼い鶏

日本では安価なケージ卵が市場の9割を占めてきましたが、 インフレ+鳥インフル+輸入穀物高で卵価が高騰。 農水省は2024年8月、採卵鶏技術指針を改定し 「止まり木・巣箱・砂浴びの設置を推奨」へ踏み込みました。:contentReference[oaicite:16]{index=16}

一方、平飼い農家の多くはフードロス飼料地域循環型堆肥を導入し、環境負荷を下げる取り組みを加速中です。

6. 素ヱコ農園とは

素ヱコ農園(すえこ のうえん)は佐賀県伊万里市にある平飼い専門の養鶏場です。
NHK World-Japan “Cycle of Waste”(2024.10 放映)で アニマルウェルフェアとフードロス削減の両立事例として特集。
◆ 豆腐店の「おから」、醤油蔵の「醤油粕」、干物工場の「いりこ屑」、規格外野菜など 産業廃棄物寸前の副産物を発酵させた自家配合飼料で 年間 120tの食品ロスを鶏の栄養に循環させています。
◆ 鶏 1 羽あたりA4 用紙 6 枚分の床面・全天候型放牧場を確保し、 「5つの自由」を満たす飼育を実践しています。

開放型平飼い鶏舎の内部(素ヱコ農園)
▲ 止まり木・巣箱・砂浴び場を完備した開放型鶏舎
おからと醤油粕を混合した自家配合飼料
▲ 「おから」「醤油粕」などを再資源化した自家配合飼料

こうした取り組みにより、AW を実践しつつ ケージ卵比 +40〜60円/個程度の価格で全国へ発送しています。
“鶏にも 人にも 地球にも優しい卵” をぜひ一度お試しください。

7. よくある質問

オーガニックとアニマルウェルフェアは同じですか?

オーガニックは無農薬・非遺伝子組換えなど生産方法中心、AW は動物の飼育環境に焦点を当てた概念です。

平飼い卵は生でも安全に食べられますか?

日本の平飼い農家は洗卵・選別・冷蔵を徹底し、サルモネラ基準はケージ卵と同等です。賞味期限内なら生食可能です。

参考文献

素ヱコ農園代表 松本啓

この記事を書いた人

松本啓(まつもとさとし)
素ヱコ農園 代表 / 養鶏家

1996年生まれ。
80歳を超えた祖母と共に循環型農業を実現したいと、大企業の内定を辞退。
海と山に囲まれた佐賀県伊万里市黒川町でゼロから平飼い養鶏をスタート。
餌と飼育法に徹底的にこだわった卵は、現在ミシュラン三つ星店でも採用される
“超人気の卵”へと成長。
著者と話をする⇩

著者と話をする
ブログに戻る