平飼い卵が高いワケ──“卵が安い国” 日本の畜産史を3分で理解

平飼い卵が高いワケ──“卵が安い国” 日本の畜産史を3分で理解

 

 

 

「平飼い卵は美味しいけど高い…」──その疑問、実は日本の畜産がたどった歴史を知ると腑に落ちます。
本記事では、戦後〜現在までの卵価推移を振り返りながら、ケージ飼い普及と輸入トウモロコシ依存という 2つの転換点を解説。平飼い卵の価格が上がる理由をデータで示します。

1. 卵はいつから安くなった?

1951年の卵価は10個161円。当時の大卒初任給5,500円で換算すると現在価値で3,000円超/パックでした :contentReference[oaicite:0]{index=0}。高度経済成長が始まる1960年代に急落し、以後60年以上 200円前後で横ばい──これが「価格の優等生」と呼ばれる所以です :contentReference[oaicite:1]{index=1}。

2. バタリーケージ導入と高度経済成長

1960年代、欧米型の多段ケージ(バタリーケージ)が日本へ一気に普及。 鶏舎1 ㎡あたりの飼育羽数が平飼い比5倍以上となり、人件費も大幅削減されました :contentReference[oaicite:2]{index=2}。 背景には伊勢湾台風(1959)後の復興支援で米国が推奨した集約畜産技術があり :contentReference[oaicite:3]{index=3}、ケージ飼いは「大量に・安く・均質に」卵を供給できる仕組みとして定着します。

3. 米国産飼料への依存構造

日本の飼料穀物自給率はわずか13%。トウモロコシの輸入量は世界第2位で、その ほぼ全量が畜産用です :contentReference[oaicite:4]{index=4}。 飼料価格の国際競争力と円高期の輸入拡大が、卵価を押し下げるもう一つの要因でした。

4. 平飼い卵が高い3つの理由

  • 飼育密度:1羽当たり3〜5倍のスペース確保=鶏舎コスト増
  • 地域飼料:輸入穀物を減らし地元米ぬかや規格外野菜を活用→原料費は上がる
  • 洗卵・選別:地面産卵による汚れ除去と人工点検で人件費増

それでも私たち素ヱコ農園は、平飼い+地元飼料を選択。 鶏の福祉とフードマイレージ削減を優先し、直販で中間マージンをカットして価格を抑えています。

5. まとめ

卵が安いのは「技術革新と輸入飼料」に支えられた戦後モデル。 平飼い卵の価格には空間・手間・地域循環という付加価値が含まれます。 価格差の背景を知り、ライフスタイルに合った卵を選びましょう。

参考・出典

  1. 農林水産省「畜産統計年報(鶏卵価格推移)」2024年版 :contentReference[oaicite:5]{index=5}
  2. 東洋経済『卵はなぜ“価格の優等生”なのか』2023年 :contentReference[oaicite:6]{index=6}
  3. 日本養鶏協会『採卵鶏の飼養形態とコスト比較』2022年 :contentReference[oaicite:7]{index=7}
  4. 並松信久「高度経済成長期における食文化の変貌」2014年 :contentReference[oaicite:8]{index=8}
  5. 農畜産業振興機構「飼料自給率の現状と課題」2023年 :contentReference[oaicite:9]{index=9}
  6. European Commission “End the Cage Age” プレスリリース 2021年 :contentReference[oaicite:10]{index=10}
  7. House of Commons Library “Use of cages for farmed animals” 2022年 :contentReference[oaicite:11]{index=11}
素ヱコ農園代表 松本啓

この記事を書いた人

松本啓(まつもとさとし)
素ヱコ農園 代表 / 養鶏家

1996年生まれ。
80歳を超えた祖母と共に循環型農業を実現したいと、大企業の内定を辞退。
海と山に囲まれた佐賀県伊万里市黒川町でゼロから平飼い養鶏をスタート。
餌と飼育法に徹底的にこだわった卵は、現在ミシュラン三つ星店でも採用される
“超人気の卵”へと成長。
著者と話をする⇩

著者と話をする
ブログに戻る