平飼い卵について〜スーパーの卵はなぜ安いの?平飼い養鶏家が教える卵の近代史 - 素ヱコ農園(スエコノウエン)平飼い卵の通販

平飼い卵について〜スーパーの卵はなぜ安いの?平飼い養鶏家が教える卵の近代史

「平飼い卵を買いたいけど高いんだよね。。。」

たまにそういった声を聞きます。

この記事では平飼い卵が高い理由、逆にいうと、スーパーの卵が安い理由について、紹介していきます。

 

スーパーの卵が安い理由

「卵は価格の優等生」と呼ばれ、スーパーのセールの対象になりやすい商品の1つです。

 

スーパーの卵は、通常1パック200円ぐらい。

安い時は1パック99円なんて時もあります。

 

僕のばあちゃんに卵に昔の卵について聞いてみました。


「昔の卵は高級品で、家で鶏を飼っていても、自分達では卵は消費せずに売っていた。

卵は、風邪をひいた時など体調が悪い時だけ食べることができる嗜好品だった。」

 

と言っていました。

 

いつから卵が安くなったのか?

 

では、いったいいつから卵は価格の優等生になったのでしょうか?

 

調べてみると、昭和26年(1951年)の卵の価格は、10個入り161円だそう。

 

ちなみに、昭和26年の大卒の初任給(公務員)は5500円、高卒の初任給(公務員)3850円。(引用:団塊世代の思い出

 

卵の価格を現在の価値に換算してみると、10個で3203円(1個当たり320円)です。

 

確かに、ばあちゃんが言う通り、昔の卵は高級品ですね。

 

卵の価格の変遷をグラフにしてみると以下の通りです。

卵の価格

 

確かに70年前から1パック(10個入り)の価格は150円〜260円の間を行き来していて、安定しているように見えます。

 

では、現在の価値に変換すると、どうなるか?
それが以下のグラフです。

現在の価格に変換した卵の価格

 

10個で3200円を超えていた時代からどんどんと卵の価値は落ちてきているのがわかります。

 

1960年当たりから一気に価格が落ちて、現在の価格に安定していますね。

 

これは高度経済成長以降に、卵の生産方式が変化し、バタリーケージ(ケージ飼い)の卵が普及したことが、大きな原因だと考えられます。

 

ケージ飼いが普及したきっかけ

では、バタリーケージが普及した起源はなんでしょうか?



調べてみると、1959年の台風19号が起源でした。

 

日本における養豚の拡大は、1959(昭和 34)年の台風15 号(いわゆる伊勢湾台風)をきっかけにしている。

その被害は甚大であったが、被災地の救援に乗り出したアメリカが、生きている豚を空輸した。

当時は肉を冷凍やチルドで送る輸送技術がなかったからである。アメリカの養豚産地であるアイオワ州(現在、全米の4分の1を生産)から、35 頭の豚(当初は 40 頭の予定であった)が山梨県へ送られ、それがその後の約 10 年間で約 50 万頭に殖えたと試算されている。

おそらくこれが全国に広がり、日本の豚のほとんどはこの時の 35 頭の豚の遺伝子をもっていると推測される。 この時の豚の頭数の急増は、飼料調達によって支えられた。これが急増の最も大きな要因であった。

もともとアイオワ州が豚の生産で全米1位となったのは、飼料であるトウモロコシに関連していたからであった。

1950年代後半のアメリカは、第二次大戦中に始まった食料増産体制の継続の影響を受け 、穀物過剰に陥っていた。そこで飼料としてのトウモロコシ市場の拡大を模索していたが、日本にアメリカ型の養豚業を定着させることによって、それが可能となった。

それまでの日本の養豚は、農家が副業的に豚を 1 頭ないし数頭を飼い、家の残飯で育てるのが主流であった。そこにアメリカから豚といっしょにやって来た農業指導員が、トウモロコシを使った配合飼料によって育てる方法を伝授した。これによって養豚業が集約的な経営となり、アメリカ型の養豚が定着した。

養豚業ばかりでなく、アメリカ産の穀物を飼料とする畜産が、日本に根付 くことになった。

(引用:高度経済成長期における食文化の変貌 ―食のフュージョン化をめぐって― 並松信久)

 

当時、トウモロコシの過剰生産に陥っていたアメリカがその売り先として、集約的な家畜生産方式を開発し、日本に輸出しました。

 

確かに、現在の日本の畜産はアメリカからの輸入配合飼料が前提となっており、配合飼料なしでは成り立たないと言っても過言ではありません。

卵の価格だけでなく、肉などの価格が安くなり、日本人の食が豊になったのは、アメリカから輸入された集約的畜産方式の恩恵とも言えるでしょう。

 

一方で、国産と表記されている畜産物ですが、実態はその全ての餌を海外のものを使用しており、海外のものが入って来なければ成り立たなくなります。

 

また、アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から、この集約的畜産方式に対して、疑念の声が上がっているのも事実です。

 

そう言った背景から、素ヱコ農園では、外国産の餌を使わず、地元で取れる餌を使用すること。

ケージではなく、平飼いを採用しています。

 

その分、価格は若干高くなりますが、鶏舎を自分達で作ること、お客さまに直接届けることで、平飼いでも価格をそこまで高くしない努力をしています。

 

どうしてそうなっているか、背景を考えることは非常に重要だなと思います。

ブログに戻る